「ただ歩く」午後と、のぞきねこ。
心が、動かなくなることがある。
日常に疲れたり、辛いことが続いたり、
常に時間や仕事に追われていたり、そんな時。
ネコにのぞかれた。
「ただ歩く」午後と、のぞきねこ。
時々、わからなくなる。
自分が誰で、毎日、何をしているのか。
今、こうしていると、将来の自分自身はどうなるのか。
自分なりに精一杯やっている今に、意義はあるのか。価値はあるのか。
毎月恒例のスランプ
スキルアップのために転職をして5ヶ月がたった。
初めてのことや、以前のものより難易度の高い仕事に挑戦し、
以前よりレベルの高い環境に身を置いている。
刺激が多く、充実感があると同時に、毎日沢山の壁にぶちあたる。
パワハラ風の先輩のターゲットになり、周りに心配されるとか。
上から・下から、それぞれの立場からの多様な期待が重いとか。
自分が「ちゃんと」できているか、不安になるとか。
どんな事にも対処できるスキルが身につけば無敵だから、
負ける気はさらさら無いのだけれど。
でも時々、鬱っぽくもなる。月に1回か2回くらいだろうか。
全エネルギーをつかって歩く
力がなくなった時には、3つのパターン。
①とりあえず、がんばる
②「なんにもしない」をする
③「なにかだけする」をする
①とりあえず、がんばる
転職してから5ヶ月、スキルアップのために、業務に関わる本を
毎週2〜3冊は読んでいる。
落ちた週末は、まず、かえって負けん気を出し、4〜5冊読む。
筋トレが趣味の人よろしく、自分をいじめ抜いて浄化する。
②「なんにもしない」をする
「もう、無理」
となったら、くまのプーさんの着ぐるみパジャマを着て、籠る。
なんにもしない、をする。
③「なにかだけする」をする
あるいは逆に、全神経を1つのことだけに集中して、
なにかだけ、をする。
自分の姿勢や体重移動を全力で感じながら、全力で歩く、とか。
ふと、覗かれる
今回は、パターン③。
家を出て、「初めての方」へ進む。知らない道、気の向くまま。
「歩く」ことしか考えずに、歩く。
たぶんこの時、自分史上いちばん無駄のない動きで歩いている。
文字で読むとアホらしいのだけど、これがけっこう良いもので。
1時間ぐらい経って、少しスッキリする。
視界に入ったカフェで、ぼーっとしたり、本を読んだり、
気が向いたことを、気を散らさずにひたすらやる。
半日ほど経って、だいぶスッキリする。
ふらふらっとカフェを出て、今度はふらふらっと路地を歩く。
すると、いい具合に古い建物の間から、何かが顔を出した。
猫。
こちらをのぞいている。
のぞきねこ
こちらをのぞく、のぞきねこ。
猫と私の両者は、距離を縮めることもなく、様子を伺い合う。
こちらがしゃがみ込むと近くに寄ってくる猫は多いのだけど、
のぞきねこは違った。
しばらくして、こちらが距離をつめると、猫は少し後ずさる。
50〜60cmしか無いだろう、建物と建物の間に戻って、座り込む。
昔々に捨てられたのだろう、付喪神にでもなっていそうな潰れた
赤い提灯の上に座る、のぞきねこ。
気がつけばちょっと、わくわくさせてもらった。
心が動かない週末の日曜日も、終わりに近づいている。
じゃあね。のぞいてくれて、ありがとね。
邪魔したね、もう帰るから。
呟くと、猫は奥の方へ帰っていく。
明日は月曜日。また一週間、闘いに行こう。