小城の主
家具を組み立てたり、歪みを直したりするのには、少し自信がある。
小城の主
部屋の模様替えをすることになった。
「することになった」というのは、必要に迫られたから。
都会の街に引っ越してからというもの、わが城は小さくなった。
そんなに広くない1Kから、せまい1Rになった。「せまい」と
いうのは別に文句ではなくて、もう本当、ただ単に狭い。
城ファシリティ
小さくても愛着のある部屋。新しい環境に飛び込んだ私にとって、
ここは「本丸」にあたる。
持続的な、愛せる領地を持つため、越してくるときには地盤やら
浸水やらのリスクをさんざん調べた。あとは、中を整えるだけ。
せまいから、たまに部屋の中で思うような動きが取れないことが
あって、度々いいレイアウトはないかと考えていたのだけど。
どう考えても、レイアウトを変えたところで部屋は広くならなかった。
ネットショップで、元々¥10,000の机が¥5,000で売られていた。
ひとつだけ、家具を変えて、あとは収納をどうにかしようか。
ぽち。
火事場のバカぢから の使い所
ネジ穴が接着剤で狭まったり、脚がガタついたりしていたけれど、
どうにか机が組みたった。
途中、どうしたってネジが締まらないと思ったのだけど、返品も
交換も面倒だという一心で自分を鼓舞した。
一人暮らしをはじめてからの年数はついに2桁になった。
今までいくつもの家具を組み立ててきたじゃないか。私ならできる。
おかしくなりそうな程、力をこめた。疲れたけれど、すっきりした。
すりすり
組み上がったばかりの机の天板を、丁寧に拭きあげる。
さらさらでつるつるの表面は、なんとも言えない気持ちよさ。
PCで作業をしながら腕が天板の上を滑るたび、えも言えない
満足感に満たされている自分に「アホだなぁ」とか思う。
満たされた気持ちのまま、黄緑色の付箋と緑色のペンを手に取る。
無意識に、さらさらと描いていた。
つめ切り。
さて、月曜日の準備をしよう。