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本と映画と、ときどき音楽 旅と雑多な考えの記録

人類 vs AIの時代。人類の強みは読解力?

最近、もっぱらの関心事のひとつに「仕事」がある。

世の大半の人は、生きる為に仕事を必要としている。欲張りな私は「やりがい」と「自分の存在意義」もほしい。それに、環境に左右されて仕事の継続に支障が出ては困る。

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今、ビジネスはモノからコトへと移行している。変化の激しい現代、どの組織に属しても「安泰」はないと言われている。

昨今、方々で声高に、ほんの十年ほどのうちに沢山の職業が姿を消す恐れが叫ばれている。様々な仕事において人間の働き手に対する需要がなくなり、働く機会がロボットやAIに奪われてしまう、ということだ。

 

人間がロボットやAIに勝っている点は何か

ところで、私には好きなメディアがある。

『TEDトーク』をご存知だろうか。英語学習者やTV番組『白熱教室』ファンの中には、ご存知の方も多いはずだ。

今回は3つのプレゼンテーションを観たが、そのうち2つはテーマが似たものだった。

将来の職業は仕事っぽくない?

www.ted.com

ロボットは大学入試に合格できるか? ※こちらは日本語字幕あり

www.ted.com

 

この2つで話されていたことは、

人間の力がロボットに勝れる点は何か。

 

技術革新は沢山の作業において「便利」を生み、「時短」を生み、私たちの暮らしを実際に「豊か」にしてきた。しかし、同時にこれまで人間自身が担ってきた仕事の分野を「私たちと共有」する機能を生んできた。その生産性は時に人類を凌駕し、じりじりと私たちの存在意義を奪いつつある。

その数には日本国内外で諸説あるが、1つ目の動画の発表者DAVID LEEは、今後10年のうちに職を失う人の数を2,500万人とする説を引用している。これは先の経済危機による失業者数の3倍にあたり、ホワイトカラーのエリート達も例外ではないとのこと。金融業界やIT業界における、データ分析や物事の判断・決定作業の代行においても機械は発達を続けている。

 

生き残りをかけて…共存の道は?

「人間は何でならロボットやAIに勝てるのか」

この問いに、2人の発表者はそれぞれこう答えている。

DAVID LEE:想像力(夢見ること)

自分の仕事をどうしようもなく退屈に感じている人も、休日には大工になったり芸術家になったり、大変なクリエイティビティを発揮することがある。嫌々こなす仕事ではなく、人が自ら動くとき。人間らしさが光るとき。人は、自らを人たらしめる才能と創造性を手に、応用力を発揮する。この点では、反復作業を得意とするロボットやAIは取って代われない。

新井紀子:意味を理解する力

現代の人工知能は、世界中で広範囲に活躍を見せているワトソンも、iPhoneユーザーにおなじみSiriも、「読解する」能力は持ち合わせていない。今や人といくらかの会話もできる人工知能だが、優れているのは検索や最適化といった統計的機能であって、読むことや意味を理解することは一切できないという。

 

読解力ならあるいは…

私はあまり自信のない月並みな人間だ。「想像力を働かせて…」と言われても、よもやビッグバン的なクリエイティビティが発揮できるわけはないだろう。私にイメージできることなんて、数学の問題で答える展開図だとか、手元にある仕事の全体像だとか、せいぜいその程度だ。1本目の動画を観て、正直どこかで「ごもっともですが…ね☺」と思ってしまった。

一方で、「読解力なら一筋の光が見える気がする…!」と思ったのは私だけだろうか。練習すれば少しずつ高められそう?参考書もたくさんあるし。

 

ロボットの東大受験からわかったこと

はじめ、新井さんは彼女たちの研究の成果である東大ロボくんの優秀さと現代技術の限界について発表しているのだと思っていた。

東京大学入試の突破を目標に作られたそのAIは、インプットされた情報をうまく組み合わせ、かつ最適化することで、多くの学生たちより優秀な小論文を書くことができる。また、新井さんたちは、それまで算数レベルだった人工知能に、記述式の高校数学を学生たちの上位1%の成績で解く頭脳を与える偉業を成し遂げた。しかし、現代のAIは「意味の理解」を全くしないため、150億個の英文を学習してなお、英語の読解問題で目指す成果をあげることができない。東大ロボくんは入試に落ちてしまったそうだ。

東大ロボくんの現在のレベルは、学生全体のトップ20%以内。国内の6割以上の大学で入試を突破することができる。日本の学生の大半を凌駕している。

 

AIに対する強みのはずが、現代人の弱点?

新井さんは考えた。

意味を全く理解できないロボットに、日本の8割以上もの学生たちが負けるだなんて

試しに、教科書の記述から、日本語で書かれた簡単な選択式穴埋め問題を作り出し、中高生に解かせてみたそうだ。本文をよく読めば答えがその中に書いてあるこの問題で、中学生の3分の1が間違った答えを選んだ。OECDのテストでいつも相対的に悪くない結果を出している日本の生徒がだ。

良い教材も、内容をきちんと読めなければよく役立てることはできない。

 

「人間らしさ」の研鑽

新井さんは、学校教育における読解力の育成方法改善を急がなければならないと警鐘をならす。現代の学生たちが暗記するばかりの勉強法をとっていることに疑問を呈している。インプットにおいてAIと真っ向勝負しても、人類に勝ち目はない。

これはなにも、今後社会に出る学生たちだけに関する話ではないはずだ。今後、人類とAIはより一層ビジネスの世界を共有するようになる。それもどうやら、私たちにはあまり時間がないようだ。

職を得ること自体が難しい現代。しかし、より未来を見据えた慎重な働き方選びと、自らの「人間らしさ」を研鑽することが、必要とされている。