kayesque

本と映画と、ときどき音楽 旅と雑多な考えの記録

中国起承転結 (2)

(今回、ちょっと記事が長いので、2つに分けます。

中国起承転結 (1) - kayesque ※(2) は写真が多め。)

 

中国の自動車

中国の交通機関について、電車の駅でも空港でも、構内に入る時点で

セキュリティチェックが行われるというのは有名な話。

(おかげで、新幹線に乗りたい時には、遅くとも10~15分前には

ゲート前に控えなければならない。切符を買うにもチェックイン

するにも、パスポートの提示が必要。)

でも、それがないバスやタクシーが日本同様かというと、そうではない。

 

プチトラブルで電車を逃し、温州へは高速バスで行くことに。

その日は中国の祝日で、上海発の、全国各地に向かう電車の切符が

全て売り切れてしまっていた(!)。次の日の電車賃も5倍ほどに膨れ

上がっていたから、代わりの電車が調達できない。

じゃあバスで行こう、という具合。

電車の運賃も、航空機同様に変動するんだなぁ。

 

(ふわーーーーっ、)っバンッ!!

 

中国のバスでは、座席の上で人が飛ぶ。

道の問題なのか、車体の問題なのか、ドライバーの問題なのか。

段差を越えるたびにお尻が浮いて、バンッと叩きつけられる。

 

高速バスは日本のそれより明らかに古く、空調は扇風機。

長旅の間ずっと、天井がギシギシガタガタ爆音を鳴らしていた。

路線バスはあまり古く見えないけれど、とにかく段差で体が浮く。

連れが楽しそうにいうことには、彼は高校時代、バスの天井まで

浮いたことがあるらしい。

 

「次は○○停留所です」といったアナウンスも掲示も無い。聞くと、

中国では、こう言ったアナウンスや社内の掲示板があるバスの方が

少ないらしい。

中国で暮らす外国人は偉いなぁ。

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でもとりあえず安い。

路線バスは、地区内ならどこまで乗っても2元(34円くらい)。

高速バスは、高い祝日に7時間くらい乗って220元(3,700円程)。

 

一方のタクシーは、カーチェイス

路上のタクシーはどれも、けたたましくクレクションを鳴らしながら、

右に左に車線変更を繰り返し、猛スピードで走り抜ける。

えぇぇぇぇ。思わず声が出る。

日本では全然、乗り物酔いなんてしないのだけど、流石にこれは

「うぷぷ」ものだった。

 

どうも、客数を稼ぐためのカーチェイスらしく、相乗りもごく普通

のこと。道中に乗りたい人がいればどんどん拾う。お客さんも、

空車でなくてもどんどん乗る。

 

でも、やっぱり安い。「結構乗ったなぁ。」とか思ってメーターを

見ると、14元(250円くらい)とかなんだなぁ。

ちなみに、自家用車を使ってUBERみたいなもので稼いでいる

ドライバーさんに乗せてもらった時は、大変な安全運転だった…。

 

みかんじゃないよ

温州では、広い中国の中でも一番と言われる難解方言が話されている

とのこと。温州では、連れのご実家に泊めてもらった。

現在、話せないなりに中国語を勉強中なのだけど、温州語での会話は

聞いていて何の検討もつかない。だって、日本人は“ざいぱんなん”、

お湯は”きっす(ぇ)”みたいな発音をしているのだもの。

でも、私がこうして平仮名で表現できる通り、温州語に出てくる音は

日本語のそれに、ちょっと近い。

 

世界中にある問題だけれど、悲しいことに、温州の若者には温州語を

話せない人が多いのだそう。温州に限らず、中国の方言は、標準語と

大きく異なり、互いに会話が成り立たない。

学校でもみんな標準語を習い、現代中国語の文字(拼音や漢字)で

表記できない方言は、絶滅が危惧されている。

全然わからないながら、このとってもチャーミングな温州語が失われる

のはとても悲しい。(標準語を話せるようになるのが先だけど、)

ざいぱんなん、ちょっと頑張って温州語も勉強しようかな。

 

ぜぃぜぃあ。

連れの実家があるメインエリアを少し外れると、小さな町がある。

古いアパートが立ち並び、どの窓にも鉄格子がついている。

中国っぽい。

もう少し行くと、古い一軒家が続く。低い建物の屋根の先に、街の

中心にあった大きなビルが見える。細い道を挟んですぐ、昔と今が

隣り合う景色。中国っぽい。

 

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歩いていると、立派な古い建物に行き着いた。

この土地の先祖がどこから来て、どんな暮らしをしてきたかが壁画の

ように記され、資料館のようになっている。

全て木でできた建物、日本でいうと、お寺のような作り。

だけど建築様式(?)は違うようで、柱に木の杭のようなものをたくさん

打ってある。また、建物の外側に色を塗った形跡があまり無く、

「ザ・木造建築」という外見だった。

入り口で少し挨拶したおじさんが中まで来て、何か「いい感じでしょ

?」みたいな事を言っていった。私たちが気に入ったのを見て嬉し

そうにしていたのが、私も嬉しかった。

 

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去り際、連れはおじさんに言われて、訪問者名簿に名前と電話番号を

書いた。なぜ電話番号が必要なのかは、連れにもわからない。

もしもし、俺のこと覚えてる?あそこ良かったでしょう、ねぇ?

と、電話をかけてでもくるつもりなのか、とか妄想する。

「ぜぃぜぃあ」(温州語の”謝謝”)といって、おじさんとさよなら。

 

ちなみに、中国の個人情報は、日本ほど重視されていないようで、

町のいたるところに、「この地区の〇〇担当官」みたいな案内が

各人の氏名・携帯番号と一緒に張り出されていた。

 

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本場の杏仁豆腐おいしい

 

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蛇を売っていたり

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麺の上に豚の血が乗っていたりもする

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中国の犬はよく寝る

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小さな村の、昔ながらの暮らし

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「電気を盗むものは国を盗む」…標語?

旅の最後に訪れたのは、临海。

日本では「臨海」というと、地名というより地理的特徴、という

印象だけれど、これが地名。

まだあまり観光地化していないため、のどかな中国を楽しめる。

万里の長城ではないけれど、ここにもgreat wallがある。日本の

侵攻に備えるために作られた長城で、これを建てた人は英雄として

語り継がれている。

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夜のダンス

中国の公園といえば、朝の太極拳、昼の運動のイメージだった。

でも、公園の夜が面白い。いたるところで、おばさまたちのダンス

がみられる。夜、散歩していると、大きな音が聞こえてくる近付く

と、おばさまたちが、10人前後とか、それよりずっと大きな集団

とか、グループに分かれて、昔のパラパラみたいな踊りをしている。

このダンスが実に多種多様で面白い。

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中でも統率がよくとれていたのは、この临海のグループ。

男性も入った大きなグループだった。

複数人や現地の人と中国を旅する際には、ぜひみて見てほしい。

 

海外の薬

ここで、訳あって1つ、薬を飲むことになった。

中国の薬はとても強い。頭ではわかっていたけれど、ここまで

とは驚いた。薬を飲んで、お腹の中に風神雷神が来てしまった。

発熱もして、半日以上、歩くのもままならなかった。

当たり前のことだけど、皆さんも気をつけましょう!

 

たくさん歩いて、たくさん見て、たくさん食べて、色々あった。

色々あったけど、おかわりしたくなる。そんな国。

中国広し。吉林省や四川、広州、もっと色々いってみたいけれど、

連れのご家族や訪問地の人々との出会いがとっても面白かった

温州は何度でも行きたいし、あまり歩けなかった临海は、今度こそ

長江も見て見たい。

 

桃太郎軍団的な何か

中国のお寺に行ったら、屋根の先を見てみてほしい。桃太郎軍団的な

一団が連なっていて、結構可愛い。

彼らはそのお寺を守っているらしい。

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りんご飴

日本でもおなじみりんご飴。

いろんなのバージョンがあるようだけど、とっても綺麗で美味しかった。。

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中国起承転結 (1)

最近よく質問がありますが、今年のゴールデンウィークは、もちろん

当社も10連休です!

 

1月、勤め先の人事担当者が社内に周知した。

よし。9泊10日で航空券を手配しよう。

 

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ずっと気になっていた中国に行くことにした。ある人を訪ねて。

本土に行くのは初めてのことだし、英語で旅行できない旅先も

プライベートの海外旅行先で1人じゃないのも初めて。

途中ではぐれては困るので、初めて海外にレンタルwi-fiを持参した。

チャットで連絡が取れれば上等、90円/日のプラン。

 

中華人民共和国

世間では色んなことを言われているけれど、実態は良くわからない。

この国出身の友人や同僚は何人もいるけれど、中国国内ってどんな

様子なんだろう。人は、文化は、社会は、どんな所なんだろう。

良く知らない巨大な隣人。はじめましては、大切な人のゆかりの地で。

 

前日も夜まで仕事をしていたから、初日は早朝の電車で空港へ。

上海までは直行便で3時間弱。

あくびしいしい搭乗した飛行機だけど、我慢できずに映画を観て

いる間に着いてしまった。

 

「荷物、それだけ?」

到着ロビーに着くと、連れが待っている。

10日間の旅行の出発地点に、機内持ち込みサイズのキャリーケースと

長財布サイズの斜めがけで現れた私に驚いている。

だって、海外では小回りが利くのが一番。

それに、預け入れた荷物が出てくるのを待つ時間だって惜しい。

 

カウチサーフィン

皆さんは、聞いたことがあるだろうか。

世界中で、宿を探す旅人と、場所を無料で提供しても良いという

ホストを結びつける、国際交流を目的としたサービス。

互いのアカウントの、自己紹介や話せる言語、以前のゲスト・ホスト

による口コミを元に、泊まりたいか・泊めたいか、判断する。

 

連れがこのサービスの利用者で、上海での最初の2泊はこれを使って

あるご家族の家に泊めてもらった。「土地を知るには、そこの人と

交流しなくちゃ」というのが連れの考え方。

このお家はとっても可愛いご家族で、ホストは旅行業界で働くきれい

な奥さん。奥さんは、中国南方の出身。上海に来るまで英語は全く

話せなかったのだけど、この国際都市の夜を飲み歩くうちに友人が

でき、中国国内で英語を身につけたのだとか。

 

旦那さんと娘さんは、少しシャイな感じ。特に娘さんは、知らん人

な上に中国語がわからない日本人に身構えてしまったようだった。

何だか私も彼女もお互いに人見知りを拗らせてしまった。

でも連れは、その娘さんといつの間にか距離を縮めていて。

置いてけぼりで少し妬ける。

 

息子さんは、奥さんに似て物怖じしない様子で、飼っている子亀を

見せてくれた。亀が手に乗り、小さな爪を私の肌に引っ掛けながら

登る感触が、なんだかとても愛おしかった。

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(亀さんもご家族の一員なので、肖像権に配慮します。キリッ)

 

中国のユダヤ人と、上海ユダヤ人街

上海での短い滞在の後、南は浙江省、温州市へ。

温州は昔から、商才に長けた人たちの土地として知られる。今でも

ビジネスをしている人は多いらしく、中国出身の人に温州出の連れ

の話をすると、「お金持ちなんじゃない?」と聞かれることも多い。

実際のところは知らないのだけど。

 

温州人を「中国のユダヤ人」と表現することもあるらしいのだけど、

むしろ上海には、大戦期に本当のユダヤ人難民が避難してきたという

ユダヤ人街とその記念館がある。

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(ここで小さなライオンに出会った)
 

そこで1人、上海のユダヤ人英雄が紹介されていた。

半日軍で中国のために医者として活躍した人だった。彼は、難民と

して上海に渡り、安心できる住まいを得た。土地の人に大変良くし

てもらったから、今度は中国を襲っている"ナチズム"から上海の人

を守る力になろう、と、土地の人と一緒に戦ったのだそう。

 

上海の、東洋と西洋が混ざった街並みはとてもきれいで、日本との

違いや海外独特の不便はそれ程感じなかった。夜、小さな街を歩いた

際も、夜空と赤提灯のコントラストが美しく、まるでそこには魔法が

住んでいる様だった。

日本人は、この美しい国に滞在するのに、短期間ならビザすら要ら

ない。けれどやはり、見るところを見れば、心のざわつく歴史が残る。

現代日本人にはどうすることも出来ないのだけれど、中国で見ておく

べきことの1つだと思う。

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欢迎您

とはいえ旅行中、露わに反日感情を目の当たりにする事はなかった。

日本から中国に対するのと同じく、中国から日本に対しても色々な

ステレオタイプがあると聞く。だから、中国に着く前の懸念事項の

ひとつは、私の「日本人」レーベルがどう作用するのか、という事

だった。

だけれど、見ず知らずの町の人や連れのご両親、カウチサーフィン

のホストのご家族もお店の人も、私が日本人だという事で嫌な顔を

される事はなかった。

今回は連れと一緒だったし、出会う人や運が良かっただけかもしれ

ないが、優しい出会いばかりで、訪れた土地やそこの人を好きにな

らずにはいられなかった。

 

中国の街を歩くと目につくもののひとつに、「ぺ」がある。

特に、中年以上の男性に多いだろうか、道を歩きながら、車の窓

から、ペっと唾を吐く。

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これだけは、10日間の旅行を終えて慣れなかった。アパートの窓

から外に向かってペっすることもあるようだし、新幹線の床にペっ

するのを見たときは驚いた。

連れのご両親はとても優しい素敵な人なのだけど、お父さんはこの

ぺっをよくやっている。どうやら、ぺっをする人のマナーや性格が

悪いのではなく、世代が上の人の文化がそうさせるらしい。

 

(今回、ちょっと記事が長いので、2つに分けます。→中国起承転結 (2) - kayesque

 

小城の主

家具を組み立てたり、歪みを直したりするのには、少し自信がある。

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小城の主

部屋の模様替えをすることになった。

「することになった」というのは、必要に迫られたから。

 

都会の街に引っ越してからというもの、わが城は小さくなった。

そんなに広くない1Kから、せまい1Rになった。「せまい」と

いうのは別に文句ではなくて、もう本当、ただ単に狭い。

 

城ファシリティ

小さくても愛着のある部屋。新しい環境に飛び込んだ私にとって、

ここは「本丸」にあたる。

持続的な、愛せる領地を持つため、越してくるときには地盤やら

浸水やらのリスクをさんざん調べた。あとは、中を整えるだけ。

 

せまいから、たまに部屋の中で思うような動きが取れないことが

あって、度々いいレイアウトはないかと考えていたのだけど。

どう考えても、レイアウトを変えたところで部屋は広くならなかった。

 

ネットショップで、元々¥10,000の机が¥5,000で売られていた。

ひとつだけ、家具を変えて、あとは収納をどうにかしようか。

 

ぽち。

 

火事場のバカぢから の使い所

ネジ穴が接着剤で狭まったり、脚がガタついたりしていたけれど、

どうにか机が組みたった。

途中、どうしたってネジが締まらないと思ったのだけど、返品も

交換も面倒だという一心で自分を鼓舞した。

 

一人暮らしをはじめてからの年数はついに2桁になった。

今までいくつもの家具を組み立ててきたじゃないか。私ならできる。

おかしくなりそうな程、力をこめた。疲れたけれど、すっきりした。

 

すりすり

組み上がったばかりの机の天板を、丁寧に拭きあげる。

さらさらでつるつるの表面は、なんとも言えない気持ちよさ。

PCで作業をしながら腕が天板の上を滑るたび、えも言えない

満足感に満たされている自分に「アホだなぁ」とか思う。

 

満たされた気持ちのまま、黄緑色の付箋と緑色のペンを手に取る。

無意識に、さらさらと描いていた。

 

つめ切り。

 

さて、月曜日の準備をしよう。

「ただ歩く」午後と、のぞきねこ。

心が、動かなくなることがある。

日常に疲れたり、辛いことが続いたり、

常に時間や仕事に追われていたり、そんな時。

ネコにのぞかれた。

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「ただ歩く」午後と、のぞきねこ。

時々、わからなくなる。

自分が誰で、毎日、何をしているのか。

今、こうしていると、将来の自分自身はどうなるのか。

自分なりに精一杯やっている今に、意義はあるのか。価値はあるのか。

 

毎月恒例のスランプ

スキルアップのために転職をして5ヶ月がたった。

初めてのことや、以前のものより難易度の高い仕事に挑戦し、

以前よりレベルの高い環境に身を置いている。

 

刺激が多く、充実感があると同時に、毎日沢山の壁にぶちあたる。

パワハラ風の先輩のターゲットになり、周りに心配されるとか。

上から・下から、それぞれの立場からの多様な期待が重いとか。

自分が「ちゃんと」できているか、不安になるとか。

 

どんな事にも対処できるスキルが身につけば無敵だから、

負ける気はさらさら無いのだけれど。

でも時々、鬱っぽくもなる。月に1回か2回くらいだろうか。

 

全エネルギーをつかって歩く

力がなくなった時には、3つのパターン。

①とりあえず、がんばる

②「なんにもしない」をする

③「なにかだけする」をする

 

①とりあえず、がんばる

転職してから5ヶ月、スキルアップのために、業務に関わる本を

毎週2〜3冊は読んでいる。

落ちた週末は、まず、かえって負けん気を出し、4〜5冊読む。

筋トレが趣味の人よろしく、自分をいじめ抜いて浄化する。

 

②「なんにもしない」をする

「もう、無理」

となったら、くまのプーさんの着ぐるみパジャマを着て、籠る。

なんにもしない、をする。

 

③「なにかだけする」をする

あるいは逆に、全神経を1つのことだけに集中して、

なにかだけ、をする。

自分の姿勢や体重移動を全力で感じながら、全力で歩く、とか。

 

ふと、覗かれる

今回は、パターン③。

家を出て、「初めての方」へ進む。知らない道、気の向くまま。

「歩く」ことしか考えずに、歩く。

たぶんこの時、自分史上いちばん無駄のない動きで歩いている。

文字で読むとアホらしいのだけど、これがけっこう良いもので。

 

1時間ぐらい経って、少しスッキリする。

視界に入ったカフェで、ぼーっとしたり、本を読んだり、

気が向いたことを、気を散らさずにひたすらやる。

 

半日ほど経って、だいぶスッキリする。

ふらふらっとカフェを出て、今度はふらふらっと路地を歩く。

すると、いい具合に古い建物の間から、何かが顔を出した。

 

猫。

こちらをのぞいている。

 

のぞきねこ

こちらをのぞく、のぞきねこ。

 

猫と私の両者は、距離を縮めることもなく、様子を伺い合う。

こちらがしゃがみ込むと近くに寄ってくる猫は多いのだけど、

のぞきねこは違った。

 

しばらくして、こちらが距離をつめると、猫は少し後ずさる。

50〜60cmしか無いだろう、建物と建物の間に戻って、座り込む。

昔々に捨てられたのだろう、付喪神にでもなっていそうな潰れた

赤い提灯の上に座る、のぞきねこ。

 

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気がつけばちょっと、わくわくさせてもらった。

心が動かない週末の日曜日も、終わりに近づいている。

 

じゃあね。のぞいてくれて、ありがとね。

邪魔したね、もう帰るから。

呟くと、猫は奥の方へ帰っていく。

 

明日は月曜日。また一週間、闘いに行こう。

あけおめシステマチック

 あろうことか。

年が明けてしまった。


皆さま、明けましておめでとうございます。

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あけおめシステマチック

転職以来、仕事が幅を取りすぎている。

土日も働くか勉強するかで、なかなかプライベートに戻れない。

ブログの記事も1本しか書かないうちに、年が明けてしまった。


個人ブログなんていうものは自己満足なので、他人には有っても

無くても良いもの。私は、「更新遅くてごめんなさい」なんて

言うほど立派なものは書いていない。

だけど、自己表現を学ぶために書いている。

やらねば、というわけで。

 

2019年は、もう少しばかりシステマチックな暮らしをしよう。


仕事はプライベートの間にするもの(…異論は認める)

今の会社では、毎日、遅くとも朝の9時には出社をし、ぎりぎり

日付が変わる前に帰ってくることもしばしば。

社会人としての筋トレのつもりで、スキルや知識、経験を得る

ために選択した事なのだけど、ちょっとバランスが悪すぎる。 


仕事は、私にとって、納得して生きるための手段。

これに人生を振り回されているようでは、本末転倒なわけで。


呑んでも飲まれるな

2019年はもう少しシステマチックに生活しよう。

今週中に、土日の時間割を作ろう。

前日の夜にかかわらず、1日を同じ時間に始めよう。

以前の様な月2は難しいけれど、定期的にブログを書こう。

翻訳のお仕事も、またやろう。

せっかくだから、新しい土地の街歩きも忘れずに。


呑んでも飲まれるな。

着ても着られるな。

我が人生は、我が手中にあり。

やったるでー。 照。

「おやすみさん」って、強いの?

たばこスパスパ、いつもイライラ。人使いは荒くて、礼儀知らず。

私だったら、こんな社長に秘書として自分の働き盛りの12年を捧げ

る様なマネはしない

まず、差別主義的なことを言う人とは仲良くなれないなぁ。

 

(ほとんど)チャーミングな王子

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冷徹・傲慢なやり手社長ジャン=マルクは、共同経営する会社と15

年の付合いがある工場を切捨て、志ある老社長一家を困難に陥れた。

この工場に多少情が湧いていた共同経営者も、ジャンが数字にしか

興味がないことはよく知っていたから、助ける事はできなかった。

ジャンが数字ばかり追いかけ仕事一筋だったのは娘のためでもあっ

たのだけど、彼は家族の愛し方を知らなかった。

これは、そんな男の物語。

生まれて間もなく離婚したから、19年間お金だけの関係だった娘。

その結婚式に向かう日は、トラブル続きの厄日。

さて、彼は間に合うか?娘にもっと嫌われるか?

 

意外なことに恋愛映画

上のあらすじに、「で、何が王子やねん。」と思うことだろう。

なにを隠そう、このいい歳の男ジャン=マルクが本作の王子候補。

「邦題がぱっとしない」と言う声もある様だけど、原題(仏語)は

"Un prince (presque) charmant" と、ほぼ同じ仕様。

強いていうなら「チャーミング」について。英語を学ぶ前、私は「

チャーミング」とは、女性・子供が「可愛い」ことだと思っていた。

だけれどこれは「魅力的」なことを意味する。

ディズニー版『美女と野獣』で繰返し歌われる曲の中にも出て来る

「プリンス・チャーミング」は、いわゆるおとぎ話常連の「理想の

殿方」「白馬の王子さま」のこと。

 

翻訳ってムズカシイ

ところで、翻訳、あるいは吹替を自然に聞かせることができる人は

すごい人だと思うわけで。

横文字だとカッコ良さげなものが、日本語になると「あれぇ~?」

と言われる、なんてことは少なくない。個人的には西部劇でこの傾

向が強い気がする。

ハリウッド版『七人の侍』に、スゴ腕ガンマンの「グッドナイト・

ロビショー」というキャラがいる。登場人物たちは、劇中で彼を「

グッドナイト」と呼ぶ。何でもヤマトコトバに訳さなければいけな

い訳ではないし、これは直訳しなくて大正解だ。

マグニフィセント・セブン (字幕版) )

次元大介を「オヤスミさん」なんて呼ぶ人は、多分、いや絶対いな

い。 早打ちの名手が、読み聞かせのおにいさんになってしまう。

…素朴!

 

テンポよく進む、おフランスな映画

今まで観てきたフランス映画に「物語進行のテンポがいい」という

イメージはなかったのだけど、この映画は観客を飽きさせない。

じゃあ典型的におフランスな点はというと、主人公の行く手を阻む

トラブルの一つが大規模ストライキなのだ。

お国柄だなぁ。

 

タイミングと人が、人間を変える

私自身の人生もこのところ転換期で、身をもって感じていることな

のだけど、ジャン=マルクも生き方を変えるきっかけを「タイミン

グ」先生にもらった1人。

ストライキや仕事、ガス欠や電欠に行く手を阻まれたから。娘の友

達に反感をかって頭突きをくらったから。行く先々に「今・ここだ

け」の出会いがあったから。

エンディングは多少、「ご都合」感も無くはないけれど、皆さんも

きっと、この映画を観て「そういうのあるよな~」と思うはず。

 

偶然が重なって、急に新しいエネルギーが生まれることがある。

ひょんな事から、あることが急に腑に落ちることがある。

そうだよなぁ。

 

(リンク: (ほとんど) チャーミングな王子(字幕版) )

いののみるもの

退職といえば、有休消化。

上司は最終出社日後も出てほしいと言うけれどそれは致しかねる。

引越しや入社の手続きで、物理的に難しい。それに何より、私には

やらなきゃいけないことがある。

 

最終出勤日までに完璧に引き継ぐ約束をした。

日頃から、備忘録を兼ねてマニュアルを作り貯めていた。家電の

それよろしく画像付きで、一挙手一投足を網羅している。

きちんと実践での引継ぎも済ませ、全ては計画通り。ニヤり。

 

夜のテンション、ドイツ、イギリス

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(魚と狩猟の博物館入り口にいる猪。視線の先は…?)

 

こんな時に、すべきこと。有休消化中でこそできること。

自宅で夜な夜な、PCを前に遂げるべき雪辱について考えていた。

ドイツに行かなければ。新卒時の入社前研修や仕事、ひとり旅への

及び腰から機会を逃し続けたドイツに。

せっかくだから、ついでにもう一国いっとこう。

行きはミュンヘン、帰りはロンドンの航空券。深夜のテンションで

購入ボタンをクリックした。

自分史上、最大規模の旅。もちろん航空券の金額も最大規模で、

信した購入確定メールを見て、ちょっと怯んだ。

 

目的地は後から

航空券を買って、旅行の外枠が決まった。入社準備を考え、9日間

の旅。2週間くらい遊びたかったのだけど。

スタート地点のミュンヘンは、ドイツの地図でいう右下(!?)にある。

10年来の夢、ケルンは左中央。寄り道しながら右から左に行って、

左端からロンドンに飛べば、移動の効率がいい。

7日目よりも安い6日目の飛行機で、イギリスに飛ぼう。

ミュンヘンシュトゥットガルトテュービンゲン、ボン・ケルン、

デュッセルドルフ、ロンドン・コッツウォルズ・バース…。決まり。

今回はドイツの南側を歩くから、日本でもちょっと知られた信号機、

アンペルマンに会うのはまたの機会に。

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           (右:テュービンゲンで見つけた宮沢賢治

 

微笑みの国

今回も、ネットで地図を予習し頭に叩き込んで行った

ヨーロッパだし、宿泊先はドミトリーではなくバジェットホテル。

自分の危機管理能力に不安があったのだけど、ドイツは寛容な微笑

みの国だった。

道端でも公共交通でも、目が合えばお互い1度にこっとする。挨拶

は誰もが返してくれる。現役の労働力世代以下は、片言でも多くの

人が英語が話す。英語がわからないお年寄りも、ドイツでドイツ語

を話さないアジア人を快く受け入れてくれる。

バスで隣に座らせてもらったおじいさんもその1人で、降りる前に

一言、“Vielen Dank”(どうもありがとう)と声をかけると、顔一杯の笑顔

と少し掠れた高い声で「いいんだよぅ」と言ってくれた。そこから

ドイツ語で何か沢山話してくれたのだけど、全然わからず、とり

えず「はい、いい週末を!」と言ってバスを降りてしまった。

 

ドイツ語をまたはじめよう

テュービンゲンのバスでそのおじいさんと出会った他に、シュトゥ

ットガルトの楽器博物館では、お客の1人もいない体験室で居眠り

中だったおじいさん学芸員に遊んでもらった。サンドバッグとかデ

ッキブラシで作った変わり種楽器が部屋中にあって、おじいさんが

「イヒヒ~」と勧めてくるから一緒に一通り遊んできた。

もちろん、おばあさんでも若い人でも気さくで親切な方に多く出会

った。時には言葉が通じないながら、心が暖まる

英語圏への旅では、自分へのお土産に本を買う決めているのだけ

ど、ほとんど忘れてしまったドイツ語もまたはじめようと、今回は

ドイツでテキストを2冊買ってきた。

ナマケモノのためのドイツ語』と『ちょー簡潔 ドイツ語文法』。

(ちなみに左の表紙、例のアンペルマンの信号機が描かれています) 

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イギリスも、やっぱり寛容な国

宿泊先が首都だったせいか、ドイツほどフレンドリーではなかった

けれど、さすが移民の国。嫌な思いをすることは一度もなかった。

イギリスもドイツも、様々な文化・人種を受け入れてきた国で、そ

れは街(町)を歩けば視覚にも明らか。

前の記事にも書いたけれど、ロンドン訛りでアングロ・サクソン

ガイドさんがこの多様性こそがロンドンの長所だと力説していた。

この人が話し好きで、バース・ストーンヘンジ行きの10時間ツア

ー中、結構な時間ロンドンの魅力について話してた。あと、EU離

脱側に投票したけど、これは人種差別じゃないよ、だそうです。笑。

 

コッツウォルズの猫と交信する

私は猫好きという猫好きではなく、単に可愛い獣が好きなのだけど

岩合光昭さんの『世界ネコ歩き』という番組は涎を垂らして観てい

る。そこで観たこの地の猫たちが忘れられず、また産業革命に乗

遅れて残った古い建物も見たくて、コッツウォルズに憧れていた。

公共交通ではアクセスが悪すぎるので、バスツアー。

結果、当然そう簡単に沢山の「ぽい」猫に出会えるはずもなく、あ

る空き地でにゃーにゃーと寄ってきてくれた、少しイメージと違う

1匹と、そこにしばらく並んで座って過ごした。

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そういう場所なのか、私のせいなのか。

今回の旅行では、知らず知らずのうちに500枚の写真を撮ったのだ

けど、写真を見た1人に怪しい写真ばかりだと言われた。確かに、

ユニークなものが沢山写っている。

これは多分、そういうものばかり目で追ってしまう私のせいなのだ

けど、「変なもの」って、好きだなぁ。

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耳で感じる歴史

空の旅は、隣がおしゃべりだと楽しい。

帰りのお隣は、最後に息切れしながら乗ってきた4人組のうち2人

で、イスラエルから来たらしい。彼らはとてもフレンドリーで、フ

ライトの間楽しませてくれた。自国のスナックをおすそ分けしてく

れたのだけど、何だか捉えどころのない味だった(←失礼)。

今回は往復ともワルシャワ経由のポーランド航空だったけれど、長

距離フライトだからか、多種多様なルーツの人がいた。当然、色々

な言語・色々なアクセントの英語が聞こえる。乗務員含め、ポーラ

ンドの方はとてもスラブ的な音で英語を話す様だ。ロシアにルーツ

があるセルビア人で、スラブ文化に詳しい知人が言うには、ポーラ

ンドでは、歴史的にロシアの影響から西側の言語を話すだけで命が

危険に晒される時代があったとのこと。

耳で世界史を感じる、初めての経験かもしれない。

 

おわりに

これが私の10年来の夢、ケルン大聖堂。高校時代に世界史の資料

集で一目惚れをした。

私は、一体前世でどんな悪いことをしたのか、大きな建造物や像

を見ると、昔から胸がザワザワして怖くなってしまう。この大聖

堂も写真で見る時点で毎回怖かった。だから、行く前はきちんと

観られるか心配だったのだけど、実際に見ると、そんな癖はどこ

かに行ってしまった。

ケルンでは大聖堂を間近に拝めるホテルに2泊したのだけれど、

3日間、1日2・3回通って、口を開いてただ立ち尽くしたり、

端っこからミサを見学したりした。

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 世界一美しいものの筆頭候補。