kayesque

本と映画と、ときどき音楽 旅と雑多な考えの記録

遠藤周作って思ってたんとちがう。クセが強めの人生応援本

昔からエッセイが苦手だった。

はじめて1冊読み切った随筆かもしれない。

 

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『ぐうたら人間学 狐狸庵閑話』

上野まで、電車で約2時間。道中読むつもりだった本を忘れた。

往きは、流れる車窓をただ眺めて考え事をする。

そんな時ほど掘り出し物の思いつきに出会うこともあるけれど、

帰りもそれで計4時間では、ただの「ボーッとした人」だ。

上野駅で電車を待つ間に本屋へ。

気分屋の私にも読める短編を探すけれどピンとくるものはない。

 

そしてこのタイトル。

かねてから探している古い映画は『ぐうたらバンザイ!』。

ニュー・シネマ・パラダイスアルフレードが出ている。

棚の間を行き来するうちに目に入ったタイトルに惹かれる。

この私にはぴったりじゃないか…。

名前だけ知っていた遠藤周作という作者も、日本人なら一度は

読んでおいたほうが良いハズ

 

買う本間違えた?

読み始めて、買う本を間違えた思った。

作中で言及される『沈黙』という作品は、映画にもなった世界的

有名作品。映画化の話は南米コロンビアの友人から聞いたほど。

この人は、何やら難しいことばかり書いているのだろうと

勝手に思っていた。

…どうも様子が違う。

 

しょうもないけど真面目な人生応援本

前半は下のネタばかりで、それこそ途中で著者自ら、

ちょっとここからいい加減に下ネタ控えます、みたいなことを

書いている。電車を降りたら速攻古本屋に行こうかと思った。

ダジャレ頻出、ツッコミどころ満載。思ってたんとちがう。

でも読むうち面白くなってくるやっぱりすごい作家なのかなぁ。

「これだから女は」みたいな言い回しが多いのだけれど、そこは

時代によるところもあるだろう。

 

ぐうたらを披露し、ぐうたらに寄り添う

この本では、フランス留学中や取材先でのストーリー、

友人たちとのエピソード等々が語られる。

著者はこう言っている。

この本を読むのは人生の哀歓を多少でも噛みしめたお方に限る。

(亭主族の哀しみ より)

洒落を散りばめ、ぼやきながら、世の愛すべきぐうたらにエールを送る。

 

ユニークな切り口からキリスト教を覗く

下ネタ・駄洒落に溢れたこの本で、私にとって一番面白かったところ。

それは、一作家のホンモノの一人称で語られるキリスト教

ノスタルジックな日本風の日常の中に覗き見る事ができる。

彼にとって、信仰は日常の一部。

 

遠藤周作は、洗礼を受けて信仰をもった作家。

『沈黙』も長崎でのキリスト教史に興味を持って生まれた作品。

日常的にいかなる宗教とも接点が少ない私には、この西洋由来の

大宗教がこんな風に語られる本は新鮮。

 

慣れ親しんだ日本文化のなかに素朴な語り口で描かれる。

「敬虔なキリスト教徒がこんなこと言う??」

きっと、教科書や学問書では出会えない姿に驚く人も多いはず。